モコの弁護士ウォッチング

少年の事件

僕は、六才になるコーギー犬
人間だと、もう大人だとか
でも、でも、
甘えるのが 好き
いい子 いい子 されるのが 好き
遊ぶのが 好き
家族と一緒にいるのが 好き
もちろん 食べるのも 好きだよ

僕のお母さんは、
もっと食べたいと思っても ダメ
もっと遊んで欲しいとボールをくっつけても おしまい
知らない犬にむかってほえていると こわくないよ
一緒に行きたいのに お留守番
と、駄目なことも、いろいろあります。

でも、僕のおもちゃで遊び、一日が終わり、寝る前に、僕をなでながら
「モコは、いい子だね。」
「モコは、かわいいね。」
「モコは、モコだから、何をしてもお母さんは許してあげるよ。」
と、言っています。僕をかわいがってくれているのが、分かります。だから、僕は、お母さんを悲しませたくないと思います。

僕のご主人様は弁護士で、ある事件は、加害者が未成年のときに人を殺してしまった事件です。食べるものがあるのに、なぜ殺すのか分かりません。それに、殺された家族の方の気持ちは、考えただけでも、いたたまれなくなります。
今は、二十歳を過ぎたその青年の書いたものを、読みながら、ご主人様と、お母さんが話しています。

「読んで どう思う?」
「内容よりも、仮面をかぶって、書いている気がするけれど。」
「小さい頃の家庭は、父親が、母親に暴力を振るっており、その後、母親は、自殺をしている。」
「母親に、もっと甘えたいのに、できなくなったのね。甘える自分は、かっこ悪いから、仮面をかぶっているのね。その上に、青年になり、いろいろな情報は入るし、『こうあらねば』ということは、わかってくるし」
「仮面かあ」

「青木悦さんが、今の子どもは、いくつも仮面をかぶっており、どれが、自分の姿なのかも、わからなくなっていると、言っていたわ。これを読んでも、何でこんなにつっぱっているの? と、思ってしまうわ。誰か、つっぱらないで、本心を語れる人が、身近にいるといいのに。」
「臨床心理士に、診てもらっているけれど。母子分離ができていないし。どう成長していくのか。」
「このまま、切り捨てていくというのも、」

とても、重い話のようです。
僕たち犬もいろいろいるよ。僕よりずっと大きいけれど、安心して飛びついていける犬もいるし、僕よりもずっと小さいけれど、急に噛み付いてくる犬もいるよ。吠えるのは、怖いときや、警戒しなければならないときや、大きな声で知らせたいときなど、いろいろあるよ。でも、急に噛み付くのは、やっつけようということだから、何かきっと理由があるんだよ。そういう犬には、僕も強いんだからと、吠えるけれど、効き目がないときには、怖くなり、逃げるんだよ。特に、猫には警戒しなければ。

人間は 大変そうなのがわかったよ。
体をつくる食べものは あるけれど心をつくる食べものが ないんだね

(横浜シルク法律事務所 高橋事務員記)

弁護士ウォッチングが本になりました!