クン、クン
あっ、いいにおいがするぞ
甘いにおいだ
クン、クン
クン、クン
お母さん、お母さん
この包んであるのは
何、何
クン、クン
開けてみるね
僕には できるからね
クン、クン
だんだん いいにおいが
強くなったよ
おいしそうだよ
おいしそうだよ
いいのかな、いいのかな
食べられるのかな
食べられるのかな
甘い美味しそうなにおい
なめてみよう
あっ、すごい、すごい
おいしいよ、おいしいよ
僕は、大河内家の犬で、名前は「モコ」といいます。お母さんは、本を読んでいるので、邪魔をしないよう一人で、美味しそうな箱を開けて、美味しいものを全部残さずに食べました。満腹な僕は、気持ちよく寝てしまいました。
「大変、大変」というお母さんの声で、目をさましました。
「チョコレートが、一箱全部なくなっている。」
「モコは、犬は、食べてはいけない食べ物なのに。それも、純度が高いチョコなのに」と、あわてています。僕は、悪いことをしたのだなーと思い、お母さんに鼻をつけ、「ごめんね、ごめんね。でも、おいしかったよ。おいしかったよ。」と、訴えました。
ちょうど、そのとき、弁護士のご主人様が帰ってきました。チョコの話を聞き、怒られるかと思ったのに僕の頭をなで心配そうな顔をしています。
「二・三日様子をみなければ。」
「大丈夫かな。」
と、心配そうです。僕は、おいしいものを食べただけだから、大丈夫だよと、教えているのに。
一週間ほどして、僕が事務所に行ったとき、事務員さんに心配されてしまいました。僕は、元気、元気なのに。
そのとき、依頼人が来て、ご主人様と話を始めました。お金を借りたのですが、年金暮らしの依頼人にとっては、返したくても、厳しくなったようです。借りたものだから、自己破産をしないで、返したいようです。
「自己破産をしたほうがいいと思うけれど、少しずつでも返したいんですね。」
「年利18%で計算すると、請求額と、約40万円の違いがあります。また、こちらの会社の場合には、長い間の取引のため、逆に過払いになりましたので、過払い金を請求していき、こちらの返済にあてます。」
「無理なく返していくには、月に4万だとすると、もう少し交渉していかなくては」
と、話しています。僕のただ食べたい、おいしいから我慢できないというチョコと違って、お金というのは、生活するのに必要なものだけに、我慢だけではないようです。それに、きちんと返していくようです。僕のチョコは、返せないけれど、人間はそうはいかないようです。でも、一人では交渉できなくても、弁護士が入り、きちんと整理していくということです。一枚一枚の領収書と債権の履歴とを比較し、計算し、交渉し、返済方法を決め、和解契約書をかわし、完了となります。贅沢のためではなくても、少し欲しいと思う気持ちで借りたものが、膨らんでいきます。あるときから、返そう返そうとして泥沼に入っていきます。
他の依頼人ですが、会社を経営し、資金繰りのために、借り、返すを繰り返し、本当は、100万近くの過払いになっていました。この方も、きちんと整理してみないと、分かりませんでした。
また、自己破産をした依頼人は、結婚し、二人で返済するからと、借りて、マンションを購入したのですが、離婚となり、返済できなくなりました。マンションの値段は下がっており、売っても返済額は減りません。自己破産をして、新しく出直すことになりました。人間は、お金という僕には分かりませんが、魅力的なものによって、いろいろ問題が起こるようです。
僕も、あの甘いチョコレートを食べたいけれど、食べさせてくれません。お母さんが、「これは、お母さんのね。」と、いいながら食べているのは、においからチョコと思うのですが、僕にはくれません。
あの、いいにおいのチョコ
食べたいなあ
食べたいなあ
あの、甘いチョコ
食べたいなあ
食べたいなあ
体に悪いからと
食べさせてくれません。
喜んでいいのか
悲しんでいいのか
でも、
食べたいなあ
食べたいなあ
(横浜シルク法律事務所 高橋事務員記)






