モコの弁護士ウォッチング

刑務所って

今日も天気がよく、気持ちのよい一日です。僕は 短い足と手を伸ばし、背伸びをしました。起きたときには、一番好きなスタイルです。僕の名前は、モコで、犬です。種類は、ウェリッシュ・コーギーです。僕の手足は短く、尻尾がないのが、特徴ですが、尻尾が無いために、歩く後姿が、腰をふりふりになり、僕のチャームポイントとなります。

二人の話し声がしてきました。
「午前中に横須賀の刑務所にいかなければならないから」
「何時に出るの」
「9時ごろ出たらいいかな」

僕は、大河内家の犬ですが、ご主人様は弁護士です。二人の会話を聞きながら
「もしかしたら、僕もつれていってもらえるかな」
と、期待しました。僕のお母さんは、弁護士の奥さんですが、運転手をし、ご主人様を車で待つような場所には、連れて行ってくれることが、多いからです。

僕は、二人の様子を 期待をこめて見つめていました。
二人は バタバタと、支度に取り掛かっています。
「モコも 行く?」
と、僕のお母さんが 聞いてくれました。やっと 聞いてくれました。
「クウーン、クウーン。」
と、返事をして、玄関に急いで行きました。出かけるときには、僕が一番早いです。一番に、外に出られるように待ちました。
「うれしいなあ」
と、ウキウキです。天気もいいし、一緒に行けるから、うれしいです。

走る車の中は、冬だというのに、暖かくとても気持ちいいです。ウトウトとしながら、子守唄のように、ご主人様と奥様(僕のお母さん)の話を、聞いていました。
「会社を経営していたけれど、うまくいかなくなって」
「大変ね。」
「横須賀の刑務所って、米軍の人も入っている刑務所でしょ」
「そうだよ。だけど、せっかく大きく経営していたのに、今のご時勢だからなあ」

僕には、誰かに会いに行くことしか、分かりません。きっと天気がいいから、楽しいだろうなあ。僕も会えるかなあ。と、考えていました。

車が停まりました。とても静かな所です。

ピーヒョロロ、ピーヒョロロ

上のほうから 鳴き声がします。僕の餌を横取りしたカラスとは違います。
とんびというらしいのですが、その鳴き声が、静かさをより増しているように感じます。

ピーヒョロロ、ピーヒョロロ、空にしみこむ とんびの声

という感じです。

ご主人様が、車から降り、門の中に入っていきました。僕は入れないし、入る人や車のチェックが厳しいし、こんなところに入って 大丈夫なのか、ちょっと心配です。でも、お母さんは、のんきそうな顔をしているので、大丈夫なのだろうとは思いますが、でもちょっと心配です。困ったときに、僕が駆けつけることができないようなので、余計心配です。

僕は、何か書いてある掲示板や、門の中を観察しました。ほとんど人はいなくて、ご主人様が入った建物も、遠くに見えます。中は静かなようで、僕のいい耳にも、ほとんど音もなく、人の気配もしません。ご主人様は、建物の中に吸い込まれたみたいです。大丈夫かなあー。

「モコ、散歩しよう」
と、お母さんが言いました。
心配だけど、歩き出しました。周りの建物も、静かな感じですが、日が暖かく、気持ちのよい天気です。お母さんと 迷子にならないよう、僕の匂いをつけながら、散歩しました。

また、門の前にもどってきて、ご主人様を待ちました。
やっと、やっと、ご主人様の姿が見えました。やったー、やったー。僕の心配は なくなりました。

話によると、会社を経営していましたが、お金の工面がつかず、騙すつもりはないのに、お金を返さないからと捕まったようです。ご主人様は、その人が 不安になったり、頼みたいことがあると、手紙がきたり、電報がきたりして会いにいくようです。裁判のときだけでなく、依頼者とは つながっているようです。弁護士とは、裁判だけをしていればいいのではなく、その他の仕事がたくさんあるようです。きっと 刑務所に入ってしまった人は、不安になり、弁護士を頼りにするのだと思います。まして、自分は、刑務所とは縁がないと思っている人は、余計に不安になると思います。僕が、門の外から見ても、違う世界のように感じました。

例えば、ご主人様によると

  • 出す手紙、もらう手紙については、内容をチェックされます。開封されます。
  • 中の人に 差し入れをするときには、中にある売店で限られた品物を買うほうがいいようです。中にある売店の品物は、安心して渡すことができます。歯ブラシから、石鹸、化粧水、チョコレート、などなど 生活に必要なものは、すべて売店にあるようです。
  • 弁護士は すぐ会えますが、他の人は、どんな関係の人か、チェックされます。
  • 面会の場で、自由に話ができるわけではなく、話してはいけないこともあるようです。例えば、中の様子などは、外には伝えてはならないようです。

等、等、ちょつと違う世界のようです。ご主人様が言うには、刑務所の治安を守るためにも、必要なことだということです。

僕もいい子でいよう。
僕も、ここに入れられないように、いい子でいよう。
僕は いい子だからね。
でも、何かあったら 助けてね。
助けに来てね。

(横浜シルク法律事務所 高橋事務員記)

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